米国商標の更新や使用宣誓書の提出をご検討中の方へ

使用宣誓書についてのルール改正

米国の使用主義は権利化したあとも貫かれており、5-6年目、9-10年目のタイミングで商標を適正に使用をしているかどうかの関所がやってきます。米国特許商標庁(USPTO)は、最近特に商標登録データベースの正確性を維持する政策を打ち出してきていて、使用証拠の検査(Audit)制度を導入し、不適切な使用見本を摘発するプログラムを使用している他、使用見本の内容としてWebsiteを使用する場合にURLを要求したり(Examination Guide 1-20)、さらにはコロナ禍の影響で2020年の夏の予定からは延期されていましたが、2021年1月からは宣誓書の提出後で完了前の過剰な指定商品の削除の補正に費用(250 USD/区分)が要求されます。即ち、米国特許商標庁は、5-6年目、9-10年目の使用宣誓書の提出時期に、着実な対応をしなければ権利失効や削除費用を請求するなどの罰則がある政策に舵を切っています。

Ponte Vedra Beach, Florida

使用宣誓書の提出時期

使用宣誓書(Declaration of Use)は、米国特許商標庁での登録日から5年目と6年目の間の1年間、9年目と10年目の間の1年間という期間で提出することになっており、これらには過ぎてしまった場合でも6ヶ月の補完期間(遅延料金が必要)があります。9年目と10年目の次は、19年目と20年目の間になります。米国特許商標庁は、商標権者と代理人へ無料のお知らせサービスを行っており、そのためには電子メールの登録が必要です。不使用について正当な理由(Excusable Nonuse)があるときは、正当な不使用についての宣誓(Affidavit)を代わりに提出することもできます。米国への直接出願の場合は、§8の使用宣誓書を提出しますが、マドプロの米国保護拡張の場合は、§71の使用宣誓書を提出します。これらはUSPTOのTEASシステム内にありますので、使用宣誓書のフォームへの直筆のサインは不要で代理人の電子的な署名で足ります。使用宣誓書を提出しなかった場合には、権利は失効します。

使用宣誓書の提出時の重要事項

使用宣誓書を提出する際に、同時に検討すべき事項があります。

  1. 使用見本を用意する。
  2. 使用していない商品を登録から削除する。
  3. 不可争性を獲得するか否か

使用見本(Specimen)については、2018年あたりから不誠実な見本の排除政策が進められており、怪しいと思われる使用見本に対する検査制度(Aduit program)や第3者からの通報制度、画像処理で偽造した見本を検出するソフトウエアの導入を行っています。また、提出する商品見本等についてのガイドラインも見直されており、商品と標章の関連性が要求され、単に包装だけで商品との関連が薄いものは審査を通過しない可能性があります。ウエブ上のページも商品と標章を示したものは証拠能力があるものと思いますが、そのページを印刷したものは、その印刷した日付とURLを記載する必要があります。また、商品については、そのページで販売の流れになっているかも重要です。使用見本(Specimen)は1つのクラス毎に裁定1つは提出する必要があります。
§8の使用宣誓書内では、使用していない商品や役務を削除することができます。日本の実務感覚では、使用していない商品も指定商品として残しておくことに問題はないのですが、米国では指定商品・指定役務として登録するからには全商品・全役務を使用していることが求められます。このため使用宣誓書を提出した後に、検査(Audit)制度に引っ掛かり、実際は使用していない商品についてのさらなる使用見本の提出を求められることもあります。検査対象となった場合に使用していない商品を削除することで失効を免れることが可能ですが、その削除補正にかかる商品役務がある区分ごとに費用を請求する制度(250 USD per class)に改正されています。このため、使用宣誓書の提出のタイミングで各商品役務に使用しているのか否かの確認をする必要があります。
使用宣誓書を提出する場合、検討することの1つは不可争性を獲得するための§15の宣誓書を提出するかどうかになります。米国では、登録から何年もたった後に、コンセント(同意)を求めて手紙をもらうこともあり、自社の社名に対しても、それに類似した商標をもっと前から使用していたと主張して争いになることもあります。コンセント(同意)が得られなければ、どちらが先かを決めるinterference proceedingに入るという主張がなされたりします。この場合、§15の宣誓書が提出されていれば、争うことができないため、相手のカードは1つ減ることになります。

更新

商標の存続期間は10年で、マドプロ出願による保護拡張を除いて、9-10年目の§8の使用宣誓書の提出時に、同時に§9の更新登録出願をすることができます。使用宣誓書を提出しても更新しなければ権利を維持することができません。

費用

2021年1月2日改正のUSPTO料金表より

手続弁護士費用(税別)政府機関費用合計(税別)
§8 or 71 使用宣誓書(DOU)の提出35,000円+10,000円*区分数225 USD per class35 ,000円+約34,000円*区分数
§15宣誓書(不可争性)30,000円+10,000円*区分数200 USD per class30,000円+約32,000円*区分数
§9更新出願30,000円+15,000円*区分数300 USD per class30,000円+約48,000円*区分数